私ぐらいの年代だと、たいていの人は小さい頃に『8時だヨ!全員集合』を観て育ったのではないでしょうか。半日で学校が終わるあの独特の解放感と、夜8時からのおふざけ番組は、土曜日の醍醐味でした。
いつの頃からか、それが『俺たちひょうきん族』になって、その後はドリフから自然とフェードアウト。
それが先日、帰宅してTVをつけたら『志村けんのバカ殿様』。ちょうど志村けんと柄本明が芸者に扮したコントが始まったところで、思わず見入ってしまいました。
出番を待つ芸者の控室。芸者というには歳を取り過ぎた二人が、今をときめく若い芸者達に、芸者の心得や粋とは何たるかを言って聞かせるものの、もはや需要のなくなった先輩芸者の言葉に説得力はまるでなく。そのうち二人はオヤジ丸出し、下ネタありの悪ノリをし出す。そんな中若い芸者はお座敷に呼ばれ、取り残される二人。ついに二人にもお呼びがかかったと思いきや、トイレ詰まりの修理を頼まれる…。といった展開のコント。
悲しいかな、今や若い芸者の方じゃなくてババア芸者の立場で観てしまう自分。いつまでも現役でいたいと思うけれど、一方で身の程をわきまえていないと、他人の目には滑稽に映ることもあるんだなぁ、とババア芸者に自分を重ねながら自嘲の笑い。それでも、台本なのか素なのか、オッサン二人の軽妙な掛け合いは、心から楽しんでふざけているようで、それならいっそのこと、突き抜けてこんなババアになるのも面白いかも、とニヤニヤしたりして。
後日、「年甲斐もなくバカ殿のコントに笑ってしまった」と妹に話すと、『バカ殿』は姪っ子たちも大好きらしく、放送がある日は「バカ殿は絶対録画しといて!!」と念を押され、画面に食い付かんばかりに観ているのだそう。
今の子も、志村けんが好きなことにまず驚く。私たち姉妹の時代(30年以上前)から、姪っ子姉妹の現在まで、志村けんの現役期間の長さたるや!面白いのが、姪っ子たちには芸者コントが全くの不評だということ。芸者コントが始まると、トイレに席を立ったり、「も~、これ全然面白くない。早く終わってー!」とブーイングが出るそうです。
「あれがいちばん面白いのにねぇ、っていうかむしろあれしか笑えない」と妹。あの面白さは一定の年齢にならないと理解できないのよ、とすっかり大人になった姉妹で志村談義に花を咲かせながら、志村けんって偉大なコメディアンなんだなぁ、と改めて思ったのでした。
願わくば、うちの姪っ子たちが芸者コントの面白いと思える日まで、続けてほしいものです。