自分でも、まさか自分がこんなこと言うようになるとは、予想だにしていなかったのですが。
「私、カスピ海ヨーグルトをかわいがってます!」
カスピ海ヨーグルトが最初に流行ったのは、12年くらい前?いやもう少し前でしょうか。当時は知り合いにヨーグルトを分けてもらって、自分で菌を増やしてまた誰かにあげて…という、人から人へ菌を受け継ぐ方法で流布していました。当時、「身体にいいから」という一言で、私をカスピ仲間に引き入れようと熱心に勧めてくれる会社のおばちゃんもいたけど、私は他人の作った料理はできれば食べたくないタイプなので、ましてや菌ともなれば絶対ムリ。正直、そのおばちゃんは性格的にキッチンをきれいにしているとはとても思えなかったこともあり、「私はズボラだから~」と丁重にお断り申し上げ、内心(みんなよくそんな気持ちワルイもの食べられるよね)と思いながら、冷ややかな目でブームを見ていたのを覚えています。
あれから10数年。冷ややかな目でブームに踊るおばちゃんたちを見つめていた女子も、自らが立派なおばちゃんとなり、日々忍び寄る心身の劣化に怯え、何とかそれに抗いたいと願うばかりとなりました。奇しくも世は腸内細菌ブーム、腸を鍛えれば病気予防にもアンチエイジングにもいいと聞けば、すぐさま発酵食品に飛び付き、ヨーグルトももっと食べねばと躍起になり、それならばヨーグルト買ってくるより自分で牛乳から作った方が安くね?→でも普通のヨーグルトは常温で作れないじゃん→カスピ海ヨーグルトなら常温でできるし!→じゃあつくる!という、何とも分かりやすい手順を踏み、そして今、せっせとカスピ海ヨーグルトを発酵させては消費する毎日。
ただ、昔と違うのは、元となるのが人からもらった菌じゃないってこと。今はちゃんと種菌が売っているのです。少なくとも、スタートは混じりっ気なしの純粋な菌だから、これなら私も安心して手が出せます。
カスピ海ヨーグルトとはコーカサス地方のグルジア(現ジョージア)で食べられている自家製ヨーグルトのことで、日本に持ち帰られたこのヨーグルトから「クレモリス菌FC株」を分離・純粋培養して「カスピ海ヨーグルト」の手作り用種菌を開発し、日本に広めたのがフジッコなんですって。クレモリス菌FC株は、乳製品に含まれる乳酸球菌の中では、唯一生きて大腸まで届くことが明らかにされたプロバイオティクス乳酸菌で、便秘予防と解消、免疫力強化、肌荒れ改善、アトピー性皮膚炎の改善、血糖値の上昇抑制、コレステロール値の低下作用が期待されるとか。
種菌が2包入って1,000円。1包で牛乳500ml分のカスピ海ヨーグルトができます。ちょっとお高い気もするけれど、2回目からはできたヨーグルトを種菌として1か月間、長くてワンシーズン作り継いでいくことができるから、すぐに元は取れるってことで。ありがたいことにカスピ海ヨーグルトは20~30℃で発酵するので、ヨーグルトメーカーがなくても、適当な容器さえあれば室温でつくることができます。ただし、容器やスプーンを熱湯消毒し、雑菌の混入を避けることが必要。
とりあえず(いつまで続くか分からないので)ダイソーで大きめのガラス容器を2つ購入し、ヨーグルト作り開始。最初の種菌でつくる際には出来上がりまで24時間以上かかるそうで、その間牛乳を常温で置いておくことに多少抵抗がありましたが、次の日、しっかりと固まっているのを確認しただけで「おぉ、菌が生きてるー!!」と感動。
まずは次回のための種ヨーグルトを熱湯消毒した容器に取り分けて保存し、いよいよ実食。トロトロと伸びる独特の粘りがカスピ海ヨーグルトの特徴。酸味は少なめかな?という程度で、ビックリするほど美味しくもなく不味くもなく、味はまぁマイルドなヨーグルトって感じ。でも酸味が少ないから、これなら甘みを足さずそのままでもイケます。
2回目からは800ml弱の牛乳に大さじ5杯ほどの種ヨーグルトの割合でつくっています(ガラス容器の容量が900mlなので)。ヨーグルトを種にする場合は、8時間ほどで出来上がるので、夜寝る前に仕込み、朝起きたら冷蔵庫に入れる、という流れ。大げさだけど、(ちゃんとできてるかな~?)なんて、朝起きるのがちょっと楽しみになったりして。
三日坊主で終わるかもしれないから、と思いながら始めたヨーグルト作りですが、意外や意外、これを続けるのは全然苦じゃないかも。今のところ順調に、つくっては食べ、またつくり、を繰り返しています。何となく自給自足みたいな充実感があるから(ちがうけど)楽しいのか、もしかしたら子どももおらず、ペットも飼えない環境にあって、自分の中で行き場を失くした“育てたい欲”みたいなものを、ヨーグルトでうまく代替してるのから楽しいのか(育てるといってもかき混ぜるだけで、相手は勝手に発酵してるだけなんですけどね)。何と言うのか、菌がちゃんと応えてくれてるのがうれしいというか。
まぁ、ヨーグルトがカワイイなんて人に言ったらキモチ悪がられることは目に見えているので絶対に言わないし、間違っても「身体にいいから、あなたにも分けてあげるわよ」なんて人に押し付けたりはしないですけど。でもついうっかり熱弁を振るってしまいたくなるくらい、カスピ海ヨーグルトにハマっています。あー、今になってつくづく分かるわー、あの時のおばちゃんの気持ち。