久しぶりに読んだ『花さき山』に感じたこと

 

夏休みに姪っ子たちの感想文の添削をするのが、いつの間にか私の担当になり、今年も2人の壊滅的な文章に驚愕しながら、何とか提出できる形に仕上げた。

大した文章力もないのに添削などおこがましいのだが、我がポンコツ一族に適任者たる者はいない。ちなみに、姪っ子たちの親である妹夫婦は真っ先に指導者候補から脱落している。

小6の姉の方は、『もういちど宙へ』(岩貞るみこ著 講談社)。尾びれを失ったイルカに人工尾びれをつくった人々とイルカの感動ドキュメンタリーである。美ら海水族館の話で、私は知らなかったのだが、テレビにも取り上げられ、結構有名な話らしい。


 

 

小3の妹の方の本は、私も幼い頃に読み、今でも心に残る絵本『花さき山』。小3で絵本って幼すぎない?と思ったが、本の選定からダメ出しをすれば、ツケが回ってくるのは私なのでそこはスルー。

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2人が自信満々で見せてきた下書きを見て、「毎年毎年どうしてそうなる?」と思わず頭を抱えた。2人とも規定の枚数に達するまで、同じ内容を何度も繰り返すだけだし、肝心な内容が的外れである。これでなぜ自信が持てるのだ!?

『もういちど宙へ』は、尾びれを失った1頭のイルカを再び泳がせるため、獣医を始め、水族館職員、ブリヂストンタイヤの技術者たち、造形作家の他、各分野の専門家が一丸となって尾びれ作りに取り組み、試行錯誤の繰り返しながらも人工尾びれを作り上げ、最終的にはジャンプも跳べるほどの成果を得るドキュメンタリー。大人になると、皆で協力することは意外に難しい(誰かが自分の力を誇示したがったり、約束を守らなかったり、子供じみた理由で仕事がうまく行かないことって多くないですか?)と常々感じている私なんかは、走り読みながら思わず感動してしまったのだが…

姪っ子作の感想文ではプロジェクトそのものに全く触れておらず、冒頭とラストの一部分から抜き出しただけの文言が並んでいる。どうもおかしいと思って問い正すと、どうやらこの本を読んだのは1年以上前の話で、今回読む手間が省けると思ってこの本を選んだものの、ほとんど内容を覚えておらず、読み返すことなく感想文に挑んだため、冒頭とラストから適当に抜き出して書いたという。なるほど、思った通り。内容が全く頭に入っていない状態で適当に書いていたワケね、納得。ある意味、読み込んで感動して残念な文章を書かれるよりマシなのか?でも残念なことに我が妹、姪っ子の母親は、娘は本を3回読んでから書いてると信じている。

小3の方、『花さき山』では自己犠牲と愛情について、ぜひ考えて欲しいところを、「この話はホントなのかウソなのか、どっちなんだろう?」みたいな、そんなことばかり書いている。「いやいやウソでしょ?ホントに気になるとこソコ?」と、こっちがホントなのかウソなのか心配になる。

『花さき山』は、家が貧しく、家族を思っていつも自分が我慢し母を助ける姉、あやが山で迷い込んだ時に山姥に会い、美しい花畑を見る。その花は、人間がひとつ優しい行いをするとひとつ咲くという。そこにはあやの花も咲いていた。あやはその後、花畑を見つけることはできなかったが、自分が我慢をする時には自分の花が咲いたな、と感じることがあった、というお話。

「この話はホント?ウソ?」と的外れなことばかり口にする姪っ子に、半ば強引に感想文らしい意見を言わせようと誘導尋問し、とりあえず本の内容に沿った感想文にはなった。本人も書いた後は全て自力で仕上たような誇らしげな顔をしていた。まぁ、普段の本人の文章と比較したら、先生には大人の手が入っているのはバレるとは思うけれど、間違っても賞を取るような出来ではないし、まぁいっかと添削終了。

無事任務を遂行でき、とりあえずホッとしたものの、今の子どもが花さき山を読んで、どう感じるのか、ちょっとわからなくなった。今の子って、昔と違って割と兄弟平等に育てられていると思うし、経済的に2人分の着物が買えないから上の子だけ我慢する、という状況も想像しにくいのかもしれない。今の子どもたちを取り巻く環境は、私が育った時代と比べても全く違うくらいだから、絵本の昔話の世界は全く想像がつかないのかもしれないと気付く。

また、貧しい時代でそうせざるを得ない設定のお話、と頭では分かっているものの、子どもの辛抱を美談で終わらせるのも、大人としては複雑な思いもある。子どもの思いやりに甘えすぎてもなぁ、と。昔はあや目線で読んでいた物語も、いつしか時が経ちオバサンになり、私の視点が変わったのかもしれない。

それに、いつでも誰に対しても『花さき山』の精神では、ダメな時もあるんじゃないのかと思うところもある。ここのところ外交問題のニュースなどで、やりたい放題の国、言いたい放題の国に付け込まれる日本、みたいな構図を見せられると、「日本ももっと言い返さないと!」と思ってしまう。善意は、受け止める側の誠意があってこそ通じるのではないか。善意を悪用されたり、当然と思われるようなこと、多くない?

もちろん、小3の姪っ子に対してそんな事は言わないし、親子間、兄弟間ではあやのような心を持って欲しいと思っているのだけれど。でも片方では、姪っ子たちにそんな辛い思いはさせたくない、という気持ちもあって。

花さき山は昔から好きな本で、長女として育った私にとって思い入れのある本なので、まさか今になって違うことを思うなんて、思ってもいなかったこと。最初は「小3に絵本は幼すぎない?」と思ったのは大きな間違いで、わたしはこの本の感想を、うまく言い表すことが出来ず、夏休みが終わった今も考えている。