カネスエの1円販売は不当なのか

 

私のお気に入りスーパー、カネスエが公正取引委員会から警告を出されるかもしれないという。大根やもやし、キャベツなどを1円で販売したことが、独占禁止法の不当廉売に当たる恐れがあるとか。原価割れの状態で継続的に商品を販売することは、他社の事業活動を困難にする要因になるから、らしい。

記事を読んでも、よく分からなかった。カネスエは規模もそれほど大きくない地方のスーパーマーケットチェーンというイメージだし、カネスエの安さの理由は、「広告宣伝費を使わない」ことだと言われているし、カネスエを利用していると、そこかしこに「割り切り」が見て取れ、それが安さにもつながっていると感じるからだ。

カネスエは、安い代わりに「普通のスーパーならこれくらいのサービス当然だよね?」というサービスがなかったりする。クレジットカードは使えないし、ポイントカード云々もない。子ども用のキャラクターカートもない。商品のバリエーションはあまり豊富ではないので、買い物の楽しみはあまりない。基本的に売り切りの姿勢なので、遅い時間に行けば野菜や肉に売り切れの商品が多数ある。閉店時間になればお客が残っていても照明が消されていく。でも、そんなところに真面目さを感じる。

カネスエは、多少制約があってもその分価格に反映してくれるならそれで良い、という人向きのスーパーで、充実したサービスを求める人や、小さな子ども連れの人には向かない。

ちなみに私は、週1回カネスエを利用する。決まった曜日の、いつも閉店間際に行くので、買おうと思っていたものが無かったことは数知れず。でも、それも「カネスエだから仕方ない」と諦める。安いからといって鮮度が悪いわけでも、質が悪いわけでもない。むしろ、某大型スーパーと比べると、野菜の鮮度は格段に良い。レジの人の動きもテキパキしている。

いつも決まったタイミングにしか買い物に行けない者にとっては、曜日特売もタイムセールも意味がない。胸の下に手を置き、ゆっくりと一礼してからおもむろにバーコードを読み取る〇〇〇のレジ係員もイライラするだけ。サービスといっても人によっては役に立たないサービスもあるワケで、必要最低限のサービスだけど、ちゃんと価格で還元してくれるカネスエ方式は、私には大変ありがたく、今となってはもう、他のスーパーでは買い物ができない身体になってしまっている。

ただ、私はカネスエで「1円セール」に遭遇したことはない。おそらく、私の利用する店舗は、近隣に競合店がないため、その必要がないからだと思う。もしかしたら数量限定で早い時間にやっていたりしていたのかもしれないけれど。ただ、陳列棚に「競合店に対抗して値下げしました!」という札は時折見かけるので、同じカネスエでも店舗ごとに、近隣の競合店の値段に合わせて値段設定を変えているのだと思う。

カネスエはチラシを一切打たない代わりに、その分商品を安く提供する。例えば、野菜1個の仕入れ値が100円とすれば、100個で1万円、1000個で10万円。それを1円で売ったとしても、広告代理店を使ってチラシを作り、新聞に折り込むコストに比べたら安い。大根をチラシ代わりにした方が、手間もコストも抑えられ、お客も嬉しい。

チラシで人を呼ぼうと思ったら、ただチラシを撒くだけでは客を呼べない。人目を引くには、激安の目玉商品が必要になる。広告宣伝費をふんだんに使い、激安価格で販売するスーパーは、どこで価格の調整をしているんだろう?

経費をどこでいくら使うか、誰に向けて使うか。広告宣伝費を使って広く皆に知らしめるのか、広告宣伝費を削って来てくれた人に還元するのか。それを公正だ不当だと判断できるのだろうか?「1円で販売することで野菜の価値を貶めた」とか、「下請け叩きをして不当に仕入れ値を下げさせた」という理由であれば、理解はできる。

もちろん、生産者や下請業者に不当な圧力をかけ、仕入れ値を不当に安く設定しているのであれば、警告されてしかるべきだと思う。それは自分のいる建築業界にも言えることで、いつも皺寄せを食らうのは、低カーストに位置する者だ。ただそれは、「1円販売をしたから」という事実だけでは分からないし、「1円販売していないから」やっていない、ということでもない。

1円セールは多少行き過ぎの感は否めないけれど、1円だから行くとか、1円じゃなきゃ行かないとか、そういうお客ばかりではないと思うので、カネスエにはこれからもいい品を安く提供して欲しいと願うばかり。

以上、法律に疎く視野の狭いオバサンが、あくまでカネスエ寄りの意見を述べてみました。